トレヴァー・ノートン
『世にも奇妙な人体実験の歴史』
(文春文庫)
以前に読んだ『0番目の患者』と、ある意味で〝対〟になるような、この『世にも奇妙な人体実験の歴史』。
〝人体実験〟と聞くと、ネガティブなイメージを持ってしまう事も多いですし、実際に人権を無視した、犯罪とも言える人体実験が繰り返されて来た歴史は事実としてありますよね。
ただ、この本で取り上げられている〝人体実験〟は、研究者自身が〝自分の体〟を使って〝人体実験〟をした、自己犠牲とも言える人体実験を取り上げています。
どのエピソードも「それ、本当なの?」と思えるほど、奇抜で危険極まりない行為を、研究者自らが自分の体で実験を繰り返しています。
どれもこれもクレイジーで、当時も現代の感覚でも理解する事は難しいと思いますし、そのような研究者が自己犠牲の実験から得られた結論についても、何処まで周囲の人達が信じるか、となるとなかなか受け入れてもらえない世界だったのかもしれません。
更に、実験の中には国や軍の機密にあたる内容もあったようです。
その為、この本に登場する〝マッド・サイエンティスト〟達は、歴史の表舞台で華やかな評価を得る事も少なかったようです。
しかし、後々の医学や科学、技術や安全において、多大なる影響を与える結果を、自らの体を使って証明してみせた〝マッド・サイエンティスト〟達の歴史。
人間の安心安全を築き上げて来た歴史の中で、〝人体実験〟は必要不可欠な事で、それはこれからも世界の何処かで行われていくはずなんですよね。
私達の何気ない普段の生活においても、何かしら人体実験されている側面はあるはずなんです。
本書を読んで、歴史の中に埋もれたクレイジーでユーモアに溢れた〝マッド・サイエンティスト〟達による人体実験のエピソードを知って、その上で、【あとがき】や【特別集中講義】まで読み進めると、決してクレイジーやユーモアだけでは片付けられない、〝人体実験〟の必要性と重み、そして闇まで感じる事が出来ると思います。
P.S.
本書は、赤根洋子さんによる翻訳なのですが、翻訳がとても素晴らしくで読みやすく、外国ならではのジョークもスマートに訳されていて、軽快に読み進める事が出来ました。
この前に読んだ本とは正反対、、、読み手の感覚や好き嫌いも多分にあるでしょうけども、翻訳によって、これだけ印象が違ってしまうのは、何かやっぱり残念ですね。。。
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