森 博嗣
『ナ・バ・テア (None But Air)』
(中公文庫)
元々は、押井守監督の『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』を観ていて、原作は小説と知っていたものの、それ以上アレコレと調べたりもしなかったのですが、妙に〝引っ掛かって〟いた作品だったので、「そういえば」と思い出して、今更なんですが原作の小説を読んでみようかなと思った次第。
シリーズは短編集を含め全6巻、との事で、まずは映画版でもヒロイン役?として登場する草薙水素(クサナギ スイト)と、大人の男で謎のエースパイロット〝ティーチャ〟の出会いを描く『ナ・バ・テア (None But Air)』を読み終えました。
(本の刊行順ではなく、物語としての時系列順で読み進める事にしました)
以下、ネタバレもあるかと思いますので、まだ読まれた事が無い方は、このへんで(笑)
映画版では姿も声すらも見聞きする事が出来ない、謎の人物〝ティーチャ〟で、草薙水素と何か関係があるんだろうな、という事まではわかるのですが、この『ナ・バ・テア (None But Air)』では、ちゃんと登場します(笑)
ですが、〝ティーチャ〟に限ったわけでは無いのですが、この小説の主人公でもある草薙水素もそうだし、他の登場人物もそうなんですが、著者自身が登場人物を読者から〝遠ざける〟ような描き方をしているというか、どんなキャラクターか想像しにくいというか、もちろん主人公の草薙水素に関しては、色々な内面の描写もあるのですが、それでもやはり、なんか〝遠く〟感じるんですよね。
そして、最も遠く感じるのが、〝ティーチャ〟。
ちゃんとキャラクターとして登場するのに、〝ティーチャ〟の内面については、数少ない会話の台詞から読み解くしか無い。
で。
映画版を観た時から妙に〝引っ掛かっていた〟のは、まさにそこで。
今回、原作を読み始めて、「あぁ、そうだったのか」みたいな。
映画版でも、登場人物が〝遠く〟感じていたんですよ。
これが、この作品の世界観なんだな、と。
で、そこが妙に気になっていたと言うか、魅力を感じていた、というか。
〝キルドレ〟という(このナ・バ・テアでは、言葉は出て来ますが、ちゃんとした説明の描写は無い)、時の流れの中で大人にはなれず、永遠に歳を取らずに生き続けるも、戦争の中で死にゆく運命の少年少女等。
誰かが戦死しても、次の追加要員が現れる。
それが繰り返される。
そんな世界に生きる登場人物の〝キルドレ〟達の一人一人を細かく描写して内面や外面を描いたところで、どんな意味があるのか。
逆に言えば、リアルな世界でも戦争は途切れる事なく何処かで発生していて、毎日と戦死者が出ている。
なんだか、この淡々と時間が過ぎ、淡々と生き、淡々と戦死していく〝キルドレ〟には、得体の知れないような皮肉が籠ってるようにも思えてしまう。
この著者が突き放すように世界を描く感覚は、好き嫌いがわかれそうですけど、私はやはり妙に引っ掛かる部分があって、続きを読みたい気持ちになっています。
映画版では草薙水素と〝ティーチャ〟の関係性は謎のままでしたが、この『ナ・バ・テア (None But Air)』では後半では「は?、どういう事?」という、ある意味、草薙水素と同じ感覚になる展開が待っていて、映画は観て気に入った方で、まだ原作は読んで無いっていう方には驚きの展開になるので、読んでみると楽しめると思いますし、凄く続きが気になると思います。
それに、吉本ばななさんの解説が、冒頭から優秀過ぎますね(爆)
ちょっと別の本も読んだり脱線しますが、今年中に全巻は読みたいですね。
あ、映画版の公式サイトのドメインは意味不明の輩に取られているのでアクセスしない方が良いと思いますよ。
(まあ、もう17年前の映画ですからねえ。。。)
P.S.
そういえば映画版で、ちっさい女の子が出て来てよね、「妹」とか言ってたような気がするが?、、、え?、まさか?
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