永嶋恵美
『檜垣澤家の炎上』
(新潮文庫)
本を読むペースも遅く、せいぜい2時間も集中出来れば良い方で、更に通勤時間ぐらいしか本を読む時間も取ってないので、この800ページほどある小説を1月中に読み終える事が出来るかな、月1冊ペースが早くも頓挫するか(笑)と思っていたのですが、それなりの日数は掛かったものの、意外にもサクサクと読み進める事が出来ました。
ゲームデザイナー・小島秀夫監督のポストで、画像だけホイってアップされていたのを目にして、「面白いのかな?」という流れ弾に当たった気分で(笑)、買ってみる事にした次第。
帯には「このミステリーがすごい」とか書いてあったので、てっきり殺人事件が起こって推理があって、みたいな話かなと思っていたら、、、殺人事件こそあるものの、そういう推理小説なミステリーでもなく、登場人物の〝人生〟が紐解かれて謎が解けて、というミステリーでした。
ん〜、〝ミステリー〟なのかな?
どう、表現したら良いのだろう。
〝ミステリー〟ていうカテゴリーにも色々あるとは思うのですが、そんな幅広い意味の中で言う、ミステリーだと思います。
読み始めて最初から、かなり面白くて次の展開は、っていう感じで読み進める事が出来たんですけど、それはなによりも主人公である〝かな子〟が魅力的だったから、かなと。
リアルにしろ架空にしろ、個人的な理想の女性像があって、それは『若草物語』に登場する四姉妹の次女〝ジョオ〟だったりして、才女で知的で自分の意思をハッキリ表現が出来て夢がある、みたいな。
まあ、そんな理想的な人間など女性にしろ男性にしろ、そうそういるわけもありませんが(笑)
でも、こういう人がいたら、性別に関係なくお付き合い出来たら、自分の人生の視野も広がると思うわけです。
で。
この主人公の、かな子も似た雰囲気を感じたんですね。
かな子の場合は夢っていうよりも、野心ではあるのですけど。
野心を抱いて自分の立場を1つ1つ積み上げていく過程は、ちょっとスリリングでもあり、次の展開を凄く期待してしまう。
そんな、かん子を取り巻く登場人物も、かな子と同様に個性的で曲者ばかり(笑)
一筋縄ではいかない。
時代背景は明治の終わりから大正に掛けて。
かな子が7歳ぐらいから、20歳前になるぐらいの物語。
明治維新からの産業の発達、資本主義到来による貧富の格差、軍国主義へ移行しつつあるキナ臭い政治。
そんな世界観を、著者は大量の参考文献・資料を元に描いているので、読んでいても自然と風景が浮かんでくる感じがする。
そして最後は、主人公のかな子も呆気に取られるが、読んでるこちらも「あら〜」っていう、ドラマチックな展開に。
かな子の前に立ちはだかった大人達を、敵だと言わんばかりに野心でのし上がろうとしていた自分自身が、そんな大人達から学び影響を受けていた事に気付く。
一人一人に人生という歴史があった事を知る。
最後の最後に、出会うべくして出会った人物と共に、時には憎しみ敵だと思っていた大人達が築き上げて来たものを、かな子はきっと引き継いで大人になっていくんだろうな、と。
出来れば、もう少し、、、かな子のその後を読みたかったなあ。。。
特に、かな子の〝敵わない相手〟として描かれたスエ。
最後、かな子はスエにどのような気持ちが湧いたのか、もっと長く深く読んでみたかった。
(もちろん、小説の中で語られているのですが、もっと読みたかった)
なかなかにして面白かった。
これ、コミック版みたいに漫画にしても、凄く面白いんじゃないかなあ。
2025年、1冊目から良い物語に出会えた感じです。
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