モジュラー入門・第ニ回目「複数信号ミックスと音程変化」

モジュラーシンセ

前回で音出しをしてみましたが、同じ要領で使用するモジュールを増やしていきましょう。


 (図3)
前回(図2)から、更に2つのモジュールを追加してみました。
A-118 Noise / Randomモジュールと、A-138b Mixer(exp.)モジュールです。
まず、A-138bですが見ての通りで、4チャンネルのミキサー・モジュールです。Doepfer A100シリーズでは、このA-138ミキサー・モジュールに幾つかのタイプがあり、A-138a (Lin.)、A-138c (Polarizing)、A-138d (Crossfader)、A-138x (Expander)があります。その中で一般的な信号のミックス用に使われるのが、A-138aとA-138bになります。
このaとbの違いですが、aは「耳に聴こえない」信号のミックスに適しているのに対して、bは「耳に聴こえる」信号のミックスに適しています、、、なのですが、どちらにしても4チャンネル・ミキサーのモジュールに変りは無いので、どちらを使っても問題ありません(笑)
もう一つ、A-118ですが、これはノイズ出力機能とランダムCV出力機能という、全く違う2つの機能を持つ複合モジュールです。とりあえずノイズ出力機能だけを使ってみる事にします。ノイズもオシレーターと同じように「耳に聴こえる」信号です。なので、ノイズの出力を直接スピーカーに接続(前回の図1と同じ感じで)すれば、直ぐにノイズの音を聴く事が出来ます。
ノイズには一般的にホワイト・ノイズとかピンク・ノイズとか、♪ザーとか♪サーとか♪ゴーとか、その音色?によって呼び名があります。最も一般的なのは、♪ザーというホワイト・ノイズだと思います。
A-118は、“White”からホワイト・ノイズが出力され、“Colored”からは、その横のBlueとRedという2つのツマミのミックスで色々なタイプのカラー・ノイズを出す事が出来ます。
さて、ではA-110のオシレーターから好きな波形(図3では三角波)とA-118のホワイト・ノイズを、A-138bミキサーにそれぞれパッチングしてみましょう。そして、A-138bの“Output”からA-120に繋いでフィルターを通してみます。A-110とA-118の音量バランスは、A-138bで調整してみましょう。
このように、沢山の信号(「耳に聴こえない」信号も「耳に聴こえる」信号も)を、ミキサー・モジュールへパッチングする事で、1つにミックスする事が出来ます。
 (図4)
図4では、更にA-145 LFOモジュールを追加してみました。
このLFOとは“ロー・フリケンシー・オシレーター”の略になります。
おっと、、、ここでも“オシレーター”という言葉が出て来ましたね、、、という事は、このLFOというモジュールも「耳に聴こえる」信号を出すという事になりますね、、、確かにA-110 VCOの時と同じ様に5種類ほどの波形(A-110 VCOは4種類でしたね)があるようです。では、試しにA-145から好きな波形を選んで、直接スピーカーに接続してみて下さい。
どうですか、、、何か聴こえましたか?
、、、なにも聴こえませんか?
モジュールやスピーカーが壊れているわけではありません、何も聴こえないのが正解なんです。
オシレーターは「耳に聴こえる」信号を出すと説明しましたが、このLFOは特別なオシレーターなのです。
頭に“ロー・フリケンシー”という言葉が付いているのですが、これは超低音域の信号を出すオシレーターなのです。あまりにも低音すぎて人間の耳には聴こえないのです。
今までは「耳に聴こえる」信号ばかりでパッチングして来ましたが、ここで初めて「耳に聴こえない」信号が登場しました。
「耳に聴こえる」信号は、最終的に“音”としてスピーカーから発生して、人間の耳で聴く事が出来ますが、「耳に聴こえない」信号は本当に聴こえないのだから、そんな信号を何に使うんだろう?
例えば舞台で演じる俳優さん達は、会場のお客さんからは観る事が出来ますね。
でも、その舞台裏で働く大道具や小道具、衣装や照明や音響さんのようなスタッフは、会場のお客さんから観る事が出来ません。
「耳に聴こえる」信号と「耳に聴こえない」信号も、これと同じ関係だと思って下さい。
「耳に聴こえる」信号が俳優さんで、「耳に聴こえない」信号がスタッフさんという具合です。
この違いが理解できれば、モジュラーを理解したといっても過言ではありません。俳優さんとスタッフをどう扱うか、あなたは監督であり演出家の立場なのですから、後はアイディア次第なのです。
前置きが長くなりましたが、改めて図4を見てみましょう。
図3からA-145 LFOモジュールが追加され、A-145のサイン波がA-110のCV 1にパッチングされています。この時、A-145の“Frequ. Range”スイッチは、とれあえず“M”にしておいて下さい。A-118はカラー・ノイズに変更してみました。BlueとRedのツマミを動かして、ノイズの音色変化も聴いてみて下さい。
さあ、どうですか。どんな感じに聴こえますか?
A-138bの2チャンネル目のツマミをゼロにして、A-118の音を切ってA-110だけの音にしてみましょう。
音程が♪高→低→高→低→………、、、と周期的に上下している事が分かると思います。
更に、A-145の“Frequ.”ツマミを動かしてみて下さい。音程の上下する周期が速くなったり遅くなったりするでしょう。“Frequ. Range”スイッチは、全体的な周期を3段階に調整出来ます。
A-145の他の波形でも試してみて下さい。周期的に音程が上下するのは同じですが、上下する感じが違うのが分かると思います。
ポイントは、LFOというモジュールは「周期的な変化」をさせる事が出来るという事なんですね。
 (図5)
図5は、図4の応用になります。
応用といっても、もう少しケーブルを用意して、どんどんパッチングしてみましょう、、、という感じです。
これだけのモジュールでも、複雑なパッチングも可能で、飛び出して来る音も音楽的かどうかは別にして(笑)、奇想天外な音を出す事も可能なのが分かると思います。
では順番に見て行きましょう。
A-145は全ての波形で色々なモジュールにパッチングして試してみましょう。もちろん“Frequ. ”ツマミや“Frequ. Range”スイッチも動かしてみましょう。A-120にパッチングすれば周期的な音色変化を作れますね。この図5では使用していませんが、“Reset In”に別のモジュールから信号を送ると、そのタイミングでLFOの周期がリセットされて頭に戻ります。これを使えば、周期的に変化させつつも、ある一定のタイミングで周期をカットするような変化をつける事が出来ます。
もし“Reset In”を試してみるなら、、、そうですね、もう1基、同じA-145 LFOを用意して、ゆっくり目の周期に合わせて上で、矩形波を“Reset In”させたいA-145 LFOにパッチングしてみると良いでしょう。矩形波は複数のモジュールの“タイミング”や“テンポ”といった同期をとるのに便利な波形なのです。
A-110では、CV 1以外にCV 2にもパッチングしてみましょう。CV 2には調整用のツマミもあるので、信号の受ける量を調整が可能です。また、PW CV 1とPW CV 2(これもCV 2側には調整用ツマミがあります)にもパッチングしてみましょう。こちらは音程ではなくて、前回に出て来た“パルス・ワイズ・モジュレーション(PWM)”を変化させるために使います。例えばLFOで周期的にPWMを変化させる事が可能なので、この場合はA-110 矩形波の音で試してみましょう。
一番上の“SYNC(シンク)”は、また後で(^^;;
A-118では、下側にあるランダム出力を使ってみましょう。
Lev.ツマミでランダムな出力の上下の深さを調整して、Rateツマミで上下に動く速さを調整出来ます。A-118が生み出すランダム波形は「耳に聴こえない」信号のランダム波形になります。なので、これをA-110にパッチングすると不規則な音程や不規則なPWM変化を作り出しますし、A-120にパッチングすると不規則な音色変化が生まれます。
「耳に聴こえる」信号も「耳に聴こえない」信号も、その他のモジュラーで使う全ての信号は、プラス方向とマイナス方向の周期的な、またはランダム(不規則な)な上下の動きをしています。
サイン波も三角波もノコギリ波も矩形波も、図形の形は違うけれど、必ず下から上へ(または上から下へ)という一本の線で描かれていたと思います。ノイズ波形はランダムに動く事によって生み出される波形になります。
更にもう一つ、図5ではホワイト・ノイズをA-110やA-120にパッチングしている場合も出してみました。グリーンの破線になっている部分です。一度、他のケーブルを抜いて、A-110 → A-120 → Main Outのような単純なセットにしてから、ホワイト・ノイズを図5のようにA-110やA-120にパッチングしてみましょう。
けっこう凄い音が出て来ると思います(笑)
同じように、もう1基A-110を用意して、追加したA-110の波形を元のA-110やA-120にパッチングしても、また違った凄い音が飛び出して来ます。
今までのパッチングを単純に文字で表すと、、、
「耳に聴こえる」信号 → Main Out
「耳に聴こえない」信号 → 「耳に聴こえる」信号 → Main Out
、、、というパターンでした。しかし、上のホワイト・ノイズを使った例では、、、
「耳に聴こえる」信号 → 「耳に聴こえる」信号 → Main Out
、、、という具合だと言えます。見方を変えると「ハウリング」させている感じとも言えます。
もちろん、更に逆のパターンで、、、
「耳に聴こえる」信号 → 「耳に聴こえない」信号 → ?????
、、、も可能ですよね。パッチングさえしてしまえば、どういう組み合わせだって出来ちゃうわけですからね。
次にA-120は、CV 1以外にCV 2とCV 3それぞれに調整用ツマミがあるので、全部で3つの音色変化等で入力できる部分があるので、複雑な音色変化をするような動きを作り出してみましょう。
見た目はかなり複雑なパッチングに見えますが、もう余裕でしょう!!(^^;;

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