電音ハッカーズ vol.7.5 モジュラー漫談補完篇01

モジュラーシンセ考察

電音ハッカーズ vol.7.5』で、モジュラーシンセのワークショップ的漫談をしたのですが、なにぶん喋るのも上手くないので、かなり撃沈してしまい、これはもうワークショップみたいな事をするべきじゃないなぁ、と痛感した次第なのであります。
 
ですが、とりあえずブログの方には箇条書きになりますが、当日の内容を補完しつつ徒然なるままに書き残しておこうと思います。
本来なら画像や動画・音声、参考リンク等々も載せるべきところだと思うのですが、その準備を考えると一向に前へ進まないので、とりあえずテキストだけになってしまいますが、まぁ、お時間ありましたら読んでみて下さいませ。という感じです。
 
ちなみに、そんなモジュラーシンセについて参考になる内容かどうかは疑問ですが(笑)
気になったところがあれば、直接、質問して頂ければ何かしらお答えは出来ると思います。
 
1.モジュラーシンセの魅力と現実
 
まずモジュラーシンセの『魅力』って、何なんだろう、という話。
 
んなモン、「使うオレの勝手だろう」、っていう話で見事なまでに完璧な回答となるわけですが、それではモジュラー漫談にならないので、続きを考えてみるわけです。
 
もちろん、俺様の勝手だろ論理が土台となっているので、以下の話も俺様理論でしか通用しないと思って下さい(笑)
 
 
さて。
突然、話は変わるのですが学校の授業とかで、現代国語なり英語なりで辞書で単語の意味等を調べる機会って、沢山ありますよね。まぁ、今はデジタル端末機を使う時代なんでしょうけども。
ちょっとデジタル端末機な辞書だと通用しない話になってくるのですが、ここは俺様論理という事で、アナログな紙の辞書を使う事とします。
で、目的の単語を調べるわけですが、その単語の載っているページには、もちろんそれ以外の単語もずらずらと載っていますよね。
そこで、経験ないですか?
たまたま目についた単語と、その意味が気になって、目的の単語そっちのけで、目に入った単語の方を読んだり。また、目的の単語を調べていたら、「あれ、だったら、この意味はなんなんだ?」ってなって、ネズミ講方式(違)で、どんどん目的とは違う単語に脱線していったり。
 
他の事に置き換えても良いのですけど、ある事をしようと思っていて、たまたま目に入った耳に入った方が気になって、どんどん脱線してしまう現象。
 
これなんですよ、モジュラーシンセの『魅力』って。
 
脱線なんです。
 
(汗)
 
モジュラーシンセ以外の、大半のシンセ(ソフト、ハード問わず)に共通するというか、ジャンル関係無くあらゆる製品にも言えるとは思うのですが、1つのシンセが完成した時、そこにはメーカー側の売り込みたい意図があるし、設計者の思想やコンセプトが反映されているわけですよね。
なので、どんなに自由度の高いシンセといえども、メーカー側の意図や設計者の思想から逸脱した使い方や表現というのは不可能に近いんですよね。
もちろん、真っ当な使い方以外の方法論で使えば、それは逸脱した使い方や表現は出来ますが、それは「なんでもあり」という話になって、これまたそこで話が終わってしまう事になるので、ここではあくまでも〝本来の使い方〟というレール上で、何が出来るのか、という範囲の事です。
しかしながら、個々のメーカーの意図、設計者の思想は、それぞれのシンセの〝個性〟になってくるわけで、だからこそ多様なタイプのシンセが生まれて来てるわけですよね。
 
そして、モジュラーシンセに目を向けると、ちょっと違う状況があると思っているのですね。
個々のメーカーの意図、設計者達の思想やコンセプト、というのは同じなんですが、モジュラーシンセの性質上、1メーカー1製品だけでは完結しないんですよね。
多用なメーカーの製品を幾つも買い揃えて、そこで1つの〝モジュラーシンセ〟という仕様に基づいて使用する。
例えば単純に1メーカーのVCO-VCF-VCAというセットを考えた時に、全て同じメーカーなので意図やコンセプトも共通の下に作られていると思うんですね。でも、モジュラーシンセでは必ずしも1つのメーカーで揃える必要性が無いわけで、そこは使うユーザー側に委ねられている。
なので、VCO,VCF,VCA、それぞれ違うメーカーで揃える事が出来るし、実際にモジュラーシンセを1つのメーカーやブランドだけで完結して使用している人も少ないでしょう。
 
そうなってくると、一つ問題が出て来るわけです。
複数のメーカーのモジュールを使うとなると、果たしてメーカーの意図や設計者の思想・コンセプトは、どうなるのか、と。
 
例えば、A社のモジュールとB社のモジュールを使った時、A社に「B社のモジュールを使ったら、どうなりますか」って問い合わせても、それは責任の範囲外でしょう。A社が、B社だけでなく世に発売されている全てのメーカーのモジュールと、自社モジュールのパッチングテストなんて不可能なわけですから。
 
こうなってくると、メーカーや設計者の、、、という本来持っているモジュール単体機としての〝個性〟が、揺らいで来るんですね。
 
極論を言うと、最終的にモジュラーシンセ自体には『個性が無い』、と言っても良いんじゃないか、と思ってるぐらいだったりします。
 
もちろん、個性の強いモジュールをメインで使ったり、特定のメーカーやブランドのモジュール使用率が高いとか、一定の本来持っている個性を引き出すような使い方もありますが、多用なメーカーを混ぜこぜに使うという事は、個々のメーカーとしての個性は薄らぐのも事実です。
 
 
そこで、ですよ。
なして、個性が薄い、無い、とかほざいてるのに『魅力』があるのか、という話になってくるのですが。
 
それはね、メーカーや設計者から、「さあ、どうぞ、個性的ですよ魅力的ですよ」と与えられる魅力では無いから、という事なんです。
A社とB社のモジュールを使った時、最後に問われるのは、A社でもなくB社でもなく。使ってるアナタの個性は何ですか、という部分を作り出せるのが、モジュラーシンセ最大の『魅力』なんですね。
先程にも書いたように、A社にB社のモジュールとの組み合わせを質問しても責任外の話ですし、逆もしかり。A社とB社のモジュールを組み合わせて、何が出来るのか、どういう事が起こるのか、それは使っているアナタ自身で実験して確認するしかないんです。
 
実際には、数社以上のメーカーのモジュールを使っている人が多い事だと思います。
そうなってくると本当に、そのメーカーと、そのモジュールの組み合わせ、というのは、使ってるアナタにしか存在しない世界かもしれないのです。もはや製造メーカーや設計者、他のモジュラーシンセユーザーが口出し出来る世界では無いんですね。
 
そうやって、実験と試行錯誤を繰り返して発見を積み重ねて、個々のメーカーだけに依存しない自分の個性をモジュラーシンセに落とし込んでいく、そんな感じなんです。
 
なので、あえて極論としてモジュラーシンセ自体には『個性が無い』と、思ってるんです。
 
さて。よし、じゅあ使うぞ、実験するぞ、色々と試してみるぞ、っていう段階なんですが。
モジュラーシンセ全体を、自分の一つの視野に入れる事が可能でしょう。そして、大半のモジュールがパネル上にあるノブと機能が直結していて、アレコレとメニューから深い階層に入ってパロメーター云々、という操作が不要なんで、、、
 
、、、す。
 
と書きたいところなのですが、ここ2,3年はフルデジタル&DSPなモジュールも沢山と出て来て、ふかぁ〜い階層メニュー持ちまくりモジュールも色々と出て来たので、一概には言えませんが(笑)
 
まぁ、ざーっと自分の持ってるモジュラーシンセのパネル群を一望は出来ますよね。
で、アレコレしようと思ってパッチング作業を始めると、あの現象のワナが待ち構えているんですよ。
 
フト目に入った、パッチングしている隣のモジュール。特に使うつもりも全く無かったけど、たまたま目に入って、、、「あれ、こっちにも繋いだら、、、どうなるなだ?」と、、、よせばいいのに、ついつい隣のモジュールも使い始めてパッチングしてしまう。そして脱線していく、、、
 
あぁ、良かった。
ここまで書いて、やっと最初の『脱線』話と繋がった(爆)
 
冗談はさておき、モジュラーシンセというのは、メーカーや設計者側からではなく、使う側が脱線していく事で自分自身の個性を落とし込めるシンセ、というのが俺様『魅力』になっています、はい。
 
 
では、最後に。
モジュラーシンセの『現実』ですか?
 
って、なんでこんな見出し書いたのか、自分でも覚えてないのですが(笑)
 
まあ、あれですよ。
〝モジュラーシンセ幻想〟ってヤツですよね。
 
SNS等を見てても、「(モジュラーシンセ使って)これかよ」という〝この程度か〟論調とか、その類いですね。
これたぶん、とにかく「モジュラーシンセは凄い」と。凄いんだから、なんでこんな程度、他の機材でも出せるような音を出してんだよ、みたいな論調ですね。
この類いは、まさに〝幻想〟なんですよね(笑)
 
まず結論から言うと、モジュラーシンセ凄くないです。
自由度なんて無いです。
ごく普通のシンセです(笑)
 
凄い事をやりたければ、PC+DAW+プラグインの方が、世界中のモジュールを全て10基ずつ揃えた超巨大システムを構築しても出せないような音が、1分あれば出せると思います(爆)
っていうか、電子音なんだから、モジュラーシンセで出せる音は、他の機材でもだいたい出せますよ。その逆の方が、必要なモジュールと数を揃える必要があるという物理的な意味で難しいぐらいです。
 
〝モジュラーシンセすげえ〟みたいな特別扱い演出というのは、イベントで集客する為のコマーシャルな要素だと思って頂ければと思いますよ。私自身も、そういう演出をして来た人間ですから、今は反省していますけども。 
 
あくまでも、機材としてはごく一般的すぎるシンセです。
 
そして、この手の話でついてまわるのが〝モジュラーシンセらしい音〟、という話題。
モジュラーシンセを20年使って来てますけど、この話題が未だによくわからないのですよね。
 
先程の話題で、「(モジュラー使って)この音かよ」、「モジュラーらしい使い方してねー」みたいな、ね。
 
だったら、逆に教えて欲しいぐらいなんですよ。
「モジュラーシンセらしい音って、なんなんですか」って(笑)
 
これも〝幻想〟でしかない話ではありますが。。。
 
少なくとも、モジュラーシンセ実機から出ている音は、全てモジュラーシンセらしい、ではなく、正に「モジュラーシンセの音」ですから。ここは揺るぎない事実。
 
どうして、こんな話題が出るのか、っていうと、結局、正解が無いんですよね。
個性が無い、っていうところに繋がるんです。正解は、自分の中の〝個性〟にしかないんです。
だから、いくらモジュラーモジュラーと叫んだところで、何処にも正解なんて無いんです。
 
そろそろ、最後に。
こういう「モジュラーシンセらしい」とか「モジュラーシンセだから」みたいな論調について、一番疑問なのは、その音の主語が〝モジュラーシンセ〟で良いんですかねという話。
そこに〝アナタ〟はいないのですか、自分はいないのですか、という事です。
モジュラーシンセの『魅力』は、メーカーや設計者の枠を超えたところに、自分の個性を落とし込む事だと思ってます。
その音の主語は、〝私〟といえるのがモジュラーシンセであり、その〝私〟を表現してくれるツールがモジュラーシンセなのです。


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