津村記久子
『水車小屋のネネ』
(毎日新聞出版)
今年に入ってから以前よりも本屋に訪れる機会も増えて、この『水車小屋のネネ』も目にはしていたんですね。
〝本屋大賞2位〟って帯からも、まあ、お薦めなんだろうね、とは思いつつスルーをしていました。500ページほどあって、ぶっといし(笑)、基本的に通勤時に読む為の本を購入しているので、あまりかさ張るのもな、という感じだったんです。
だったんですが。
たまたま目にした、〝18歳と8歳の姉妹がたどり着いた町で出会った、しゃべる鳥〈ネネ〉〟という文言に反応してしまった。
「ん?、しゃべる鳥って?」
よくよく本の表紙を見ると、、、体がグレーで尻尾だけ赤い鳥が描かれている。
こんな地味で〝しゃべる〟鳥は、、、
「ヨウムじゃね?」、と(笑)
ちょいと立ち読みで、最初の方をサラーって流し読みしてみたら、本文中にも「ヨウム」とハッキリ書かれている。
ヨウム飼い23年目の私としては、これは読まねば、と(笑)
以下、ネタバレもあるかと思いますので、これから読む予定の方は、ここでとっとと、この画面を閉じてしまって下さいませ。
読み終わって、というか読んでる最中から感じていたんですけど、主人公の姉妹を含めて、人物像というものが今ひとつ、ビジュアル的な印象といいますか思い浮かぶ事がなく、淡々と物語が進んでいく感じでした。
かといって、主人公の姉妹を含めて登場人物に感情移入が出来ないのかといえば、そんな事はなく、登場人物のアレコレを追い掛けていたり、気にしてみたり、という気持ちは自然と湧いてくるんですね。
前半は姉妹の〝姉〟の視点、中盤からは〝妹〟の視点で物語は進むように思うんですけど、この淡々とした感じは、実はヨウムである鳥の〝ネネ〟の視点を通して言語化してるんじゃないかと。
そう考えると、主人公である姉妹だけではなく、ネネの周りに登場する人物について、誰しもが平等な立場であり、ネネから見ればその違いは無いのかもしれない。
表紙の絵の雰囲気や、しゃべる鳥〈ネネ〉、というイメージから、のほほんとした話なのかと思っていたら、最初の導入部分で、「え?、そういう話なの?」って気持ちになって、「これ、のほほんとした気分で読める話なのか?」と思ったのですが、結果的に、のほほんとした気分で読めました。
姉妹の新生活が始まって、「あれ、もしかして結末は、蕎麦屋を引き継ぐのかな」と思いながら読み進めていたのですが、遠回りしながら、ある意味で〝引き継いだ〟結末だったですよね。なんかとりあえず、「ああ、良かったな」と。
なんて言うんでしょうね。
サザエさんって言うと、ちょっと極端ですけど、なんてことはない、街に住んでいる姉妹(家族)の日常が描かれていて、多かれ少なかれ人は山あり谷ありの人生のはずだと思うのですけど、そんな部分はサラッと流すように書かれていて、「まあでも、大半の人の人生なんて、実際はこんな感じなのかもね」と、淡々と毎日が過ぎて行きますよね。
そんな淡々とした日々が、この物語を読み終えると40年もの時が過ぎている。
500ページの小説ですが、「そういえば40年前の自分って、どうだったかな」と思わせてくれるぐらい、ちゃんと時の流れを感じさせてくれる。
なんだか、自分も同じ街に住んでる住人なんじゃないかと思うぐらい。
そして読み終わる時に、「では、さようなら」という感じがして、姉妹は姉妹の人生が続くし、私には私の人生が続くし、また機会があったら会うんでしょうね。それぐらいの「さよなら」という。
まあ、とりあえず。
蕎麦、食べたい。
これは飯テロ小説に違いない。
P.S.
ヨウムについて。
私もヨウムを買い始めて23年目になります。当の本人は24歳になるのかな、1歳ぐらいで家に来たので。
人間なら、とっくに成人してますがな(笑)
ネネは登場時で10歳、最後は50歳ぐらいになる。
それぐらい、ヨウムは長生きします。
飼うタイミング間違えると、確実に飼い主の方が先に逝ってしまいます(笑)
著者も、しっかりヨウムについて調べられているのがわかります。
ヨウムを飼ってる方なら、ネネの描写に「ニヤニヤ」してしまうと思います。
ヨウムは、よく喋りますが所謂〝おうむ返し〟のように、言われた言葉を覚えて、そのまま返すだけ、だけではなく、状況に応じて言葉を選んで喋る能力があります。
その為、人間との妙な〝会話〟が成立する事が多々あります。
言葉そのものの意味はわからなくても、状況と言葉を結びつけているんですね。
例えば私の飼うヨウムだと、自宅に人の気配があっても別部屋にいて人影が見えない時は「何してるの?」と喋って来ます。
掃除をしていると、「もう終わった?」と聞いて来ます。
電話が掛かってくると、先に「もしもし」って話ます。
玩具で遊んでいて、言うことが聞かずイライラしてくると「あかんやろ!!」って言います。
食べ物を持ってる時に落としてしまったら、「あー、もうっ!!」って言ったりします。
眠たくて、そろそろ寝かせて、って時は「寝よか」と言います。
これらの言葉は、他の状況下では、ほぼ言わないです。
また、ネネも音楽好きですが、自分の好きな音楽(音?)が流れてくると、体を左右に振ってリズムとったり、「はぁー」とか、何かハモろうとします。
もっとしっかり訓練すれば、色々と出来るのがヨウムです。
でも、さすがに小説の中のネネは、スーパーヨウムですよね(笑)
まあ、それはちょっとデフォルメしていますけど、ヨウムの楽しさ不思議さは、しっかりと描かれていて、「うちのはなぁ、、、もうちょっと頭が良くならないと」って、良い迷惑をしていたと思います。
その迷惑していた、うちのヨウムが以下。
名前は、〝う〜にゃ〟です。
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