角幡唯介
『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極 』
(集英社文庫)
たまたま知った『フランクリン遠征』の話が謎めいていた事と、世界的な登山家で冒険家である故・植村直己氏の影響で日本一周一人旅をしてしまったぐらいなので、旅行記やら冒険物は好きという事で気になりました。
19世紀半ば、イギリス海軍のフランクリン大佐が北西航路発見の為、北極圏へ遠征し遭難。フランクリン大佐を含む隊員129名全員が失踪した事件。
ちょっと気になって調べていたら、なかなか衝撃的というか凄まじい内容で、今から180年ぐらい前の事件ながら、つい最近の2016年にも調査がおこなわれて遭難した当時の船を発見、というニュースもあったらしく、いまだ全容が解明されていないという。
日本語で詳しく読める本が無いのかなと探したら、ありました。
そして、これが唯一、日本語でフランクリン遠征の事件を知る事が出来る本なんじゃないでしょうか。
冒険家でノンフィクション作家の角幡唯介氏が、同じく冒険家の荻田泰永氏と共に、実際にフランクリン遠征隊が通ったであろう北極圏の道程を踏破。
実際に歩いた経験と得た感覚、180年前の事件と調査で判明した事実、そして今だ謎に包まれた事案を推論しながら冒険が進む。
冒険記としての北極圏の厳しさと人柄が出るユーモア、そこから次の展開が気になるワクワク感。そして、テーマとしては重い遠征隊129人の全員が死亡したと思われ、生き残るためにカニバリズムまでおこなわれた遭難事件を、事実と照らし合わせながら謎解きをしていくミステリー感。
後半、ちょっとダレてしまう箇所もあったのですが、全体としては読みやすいし、かなり引き込まれました。
旅行記や冒険物が好きな方でしたら、とても楽しめる作品だと思います。
そして、いまだ全容が解明されていない『フランクリン遠征』に想いが巡ります。
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