土屋うさぎ
『謎の香りはパン屋から』
(宝島社)
漫画家志望のパン屋でアルバイトする大学生、市倉小春が主人公。
小春の身の回りで起こる〝些細な出来事〟、自分には関係も無いとスルーしがちな日常の出来事にも、主人公・小春は気にかけていると、意外な真実があったりする。というような展開で、パン屋が舞台らしく各章毎にテーマのパンが決まっていてストーリーが進んでいきます。
基本的に各章で読み切りな感じですが、時間軸としては第一章から流れていきます。

正直なところ、〝宝島社の2025年第23回『このミステリーがすごい!』大賞〟という見出しにつられて買うと、ガッカリするかもしれません。
個人的には、そのような見出しよりも、パン好きと表紙のデザインという〝ジャケ買い〟に近い感じで、事前情報も作家さんの事も全く知らずに購入したので、最初からミステリーを読みたい、という感じで手にしたわけではなかったのですが。
主人公近辺(基本的にアルバイト先であるパン屋)で発生する日常的な出来事、同僚やお店に来るお客さんとの間での些細な事から話が膨らんでいく感じで、登場人物のプライベートな裏側を少し覗き見するストーリーで、一般的に思い浮かべる〝ミステリー〟とカテゴライズしてよいものか、という印象です。
その反面、私のように事前情報も知らず、ミステリーとも気にせず、〝ジャケ買い〟した感覚で読み始めると、登場人物がイキイキと描かれていて、読んでいて「パン買いに行くか」、と楽しめる内容でした。
各章単位で読み切りなのも良いですし、小説が苦手な人にも気楽に読めると思います。
この登場人物や舞台設定で長編でミステリー物に仕上げた感じも読んでみたいですね。あと、この漫画版があっても面白そうです。
で、個人的にメロンパンが出てこなかったので、レビュー評価は減点1とします(笑)
P.S.
パン屋があるのは、大阪府豊中市という設定で、もちろん架空のパン屋のようですが、この本の中に出てくる他のパン屋で、似たような?関連っぽい?店名のパン屋さんは、その周辺に実在しているようですね。
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