森 博嗣
『フラッタ・リンツ・ライフ (Flutter into Life)』
(中公文庫)
元々は、押井守監督の『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』を観ていて、原作は小説と知っていたものの、それ以上アレコレと調べたりもしなかったのですが、妙に〝引っ掛かって〟いた作品だったので、「そういえば」と思い出して、今更なんですが原作の小説を読んでみようかなと思った次第。
発刊順ではなく、時系列順に読み進めています。
シリーズは短編集を含め全6巻、その3巻目『フラッタ・リンツ・ライフ』(時系列順の3巻目)。
以下、ネタバレもあるかと思いますので、まだ読まれた事が無い方は、このへんで(笑)

冒頭で今回の主人公であるクリタ・ジンロウら仲間と空を飛ぶシーンを除けば、不本意ながら中間管理職になってしまったクサナギ大尉は地上勤務で鬱々とした日々な様子。
空に飛べない事で、前作のカンナミからの視点、そして今回のクリタからの視点で描かれる、この物語の最も重要なキャラクター〝クサナギ・スイト〟が、より鮮明になって来たというか、解像度が上がったというか、より近く感じるようになってきて、『空』のシーンを描かない事により、クサナギ・スイトの内面が浮き彫りになってくる感覚で、読んでいて今まで以上に入り込めました。
今までは、どちらかといえば『空』のシーンで感情の動きが大きく描かれて、内面的な〝静〟の部分は淡々と語られる感じで、何処となくクサナギ・スイトをはじめ、キャラクターとの距離感が遠く感じる作品だったイメージなんですが、今回は、グッと近付いた感覚なんですね。
そしてなにより、今回は『キルドレ』の秘密が少し暴かれる事になる。
時系列としての1巻目『ナ・バ・テア』で、ティーチャとの間に子供ができて、クサナギ・スイトの意思に関係なく、生まれた子供は遠くへ引き取られてしまう、、、
そして、この時系列の3巻目でクサナギ・ミズキという妹が登場しますが、この辺りは〝妹〟以上の説明もなく、謎に満ちています。
そして、クサナギ・スイトが妊娠・出産した事が、『キルドレ』の秘密と大きな関わりがあり、命まで狙われる事になってしまう。
クリタはクサナギ・スイトの秘密を知ってしまう事になってしまいますが、同時に戦闘でティーチャと出会してしまい負傷をして戦線離脱、戦闘の第一線からは外されてしまう。
それはティーチャと戦闘をしてしまったからなのか、それともクサナギ・スイトの秘密を知ってしまったからなのか。
『キルドレ』から普通の〝人間〟に戻ってしまったクサナギ・スイトは、何を考えているのか。
今までは距離を保ちつつ物語を読まされている感じだったのが、突然、これまで読んで来た事を色々と〝突き付けられる〟というようなストーリーだと思います。
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