MIDIっていう規格、確か制定されたのが1983年でしたか。
電子楽器同士の情報共有のために制定された規格で、この規格が音楽制作業界に大きな変化をもたらしたのは確かですよね。
それから20年が過ぎたわけですけども、実はMIDIって規格、幾つかのバージョン・アップがあったものの、基本的な部分の仕様って変わってないんですよね。
おかげでユーザーである私達は、新しい機材を導入してもMIDIの部分に関しては、直ぐに対応が出来る。仕様が変わってないのだから、新しい機材に変えてもMIDIは直ぐに使いこなす事が出来ると。
これは、仕様が変化しない故の恩恵です。
でも、同時に仕様が変化しない事への“慣れ”ってあると思うんですよ。
MIDIの仕様が変化しないという事は、MIDIが作り出す世界観も変化していないという事だと思うんです。MIDIをベースとして作られる楽曲も、20年前と大きな変化が無いとも言えるんじゃないかと思うわけです。
この事を凄く実感したのが、自分でオリジナル曲を作るようになった頃の事です。
テクノが好きですから、オリジナルでテクノを作り始めたわけです。しかし、どうにも駄目なんですよ、これが。頑張ってMIDIでデータを作って、シンセサイザーを鳴らしても、あのテクノが持つ「躍動感」が感じないんです。単純に。自分の才能というか、作れるレベルはこの程度なのかなぁ、と思っていたのですが、ある時フト思い立って、ミキサーを色々と触っていた時の事です。謎が解けたというか、「あ、これだ、この躍動感」って感じになったのが。
リズムのパートを鳴らしていて、ミキサーに付いているEQ(イコライザー)を調整していたんですね。その時、リズムのグルーヴに合わせて、Low EQやHigh EQを動かしていたのですが、それが凄く音に躍動感を与えていたんです。それまで無機質だったMIDIで作ったリズムが、本当に目の前で音を出しているぞっ、、、という感じのリズムに変化した。
感動でしたねぇ、「あぁ、そうなんだ」って。
ミキサーは、名前の通り音をミックスするだけじゃなくて、これは“楽器”なんだと。
その時から、ずいぶんMIDIで作るデータは適当になりましたね(笑)
それ以前は、ペロシティは勿論のこと、ステップタイムやゲートタイム、モジュレーションからエクスクルーシブ、ありとあらゆるMIDIデータを入力して表現しようとしていたのですけど、それじゃぁ駄目なんだなぁ、と気が付いた。
それから今になって、パソコンも随分と安くなり、音楽ソフトもMIDIだけでなくAudioデータも扱えるようになった。音楽ソフトとAudioインターフェイス合わしても、5万円あればおつりが来る時代。これだけで、数百万するようなスタジオ・セットが自分のパソコンの中に、出来上がってしまう。
そんな時代でMIDIって、どうなんだろう、と。
もちろん、DTMや音楽を演奏・作る側の入り口としてMIDIは有効な方法論だと思う。
でも、やっぱり、MIDIという“慣れ”が、作る側の選択肢を狭めているように思う。
僕がミキサーを触っていた時に感じた事は、MIDIからではなく音、Audioとして存在していたからこそ、なんだと思う。音楽はユーザーの耳へと伝わる。もちろん、それがLIVEであれば目にも伝わる。最終的に聴く人の五感に訴えかける。MIDIには、それが無い。
打ち込み(MIDI)音楽は、詰まらない、冷たい、寂しい、、、という意見がある。
それは正解だと思う。ワープロや画像データと同じ、単なるパソコン上のデータでしかないわけですから、MIDIというものは。
そんなMIDIで作られたデータを、音楽として成り立たせるには、音を出さなくちゃいけない。データはMIDIであっても、音としては作り手がきっちりコントロールする。これが出来れば、きっと無機質で冷たい、寂しい音にはならないと思うんです。
結局、MIDIって、単なる通過点でしかないのかな、と思います。
私自身、本格的にAudioデータを扱える環境になってからのオリジナル曲は、ほとんどMIDIデータが存在しません。存在してても、断片的なものばかりです。それにMIDIで打ち込みしたフレーズであっても、それが人の耳に伝わる時には、MIDIのフレーズとは随分、違ったフレーズになっています。
MIDIを料理で例えるなら、必要な料理のレシピをメモした、、、というぐらいです。
実際の素材や料理の過程は、MIDIではなくAudioデータになってから、という感じになってます。このおかげで、随分と自由になりました。
例えば、MIDIで一般的なDTM音源でリズムを作ったとします。そのままMIDIで鳴らすのと、それを一旦、Audioにして鳴らすとのでは、随分と雰囲気が変わってきます。それにAudioにしてあれば、そこから自分の音を作っていくことも出来ます。
もし、MIDIとAudioの両方を扱える環境であるなら、なによりAudioにシフトする事をお勧めしたいと思う。MIDIでは不可能だった、人へ伝える「音」そのものを扱えるのですから、、、「音」そのものを扱える事は、音楽を作る上で、とても大切なんじゃないかと思ってるんです。
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