シンセサイザーを持っていても、初めから沢山の音色がプリセットされているので、新しくオリジナル音色を作る事って、最近ではあまりやらない人が多いと思います。
しかぁし、やはりシンセサイザーは自分の「音」を作ってこそ、最大限の楽しさがあるはずっ!!
元々、波形合成(シンセサイズ)をして自然界に存在しない音を得意とするシンセサイザーなのですから、ここは一つ、自分でオリジナルな音色を作ってみませんか?
凄く単純な音でもいいんです。プリセットの音色じゃなくて、作ってる“今”のフィーリングが大切なので、単純な音色だったとしても自分の気持ちが現れた音色になってくるんです。
さて、今回はシンセサイザーらしい音として、「パッド(Pad)」系の音を作ってみます。使うシンセサイザーは、私が所有するRoland Juno-106。1983年の発売ですから、今から20年前のシンセサイザーですね、確かRolandのMIDI搭載シンセサイザー第一号でしたっけ?
今回、音色はJuno-106を使って制作しますが、Juno-106はシンセサイザーの基本的なパロメータしか持っていないので、ここ最近のシンセサイザーを持ってらっしゃる方なら、同じような理論で、Juno-106よりゴージャスな音作りが可能です。ぜひ、御自分のシンセサイザーでオリジナルなパッド音の制作にトライしてみて下さい。
Roland Juno-106
Roland Juno-106のパネルは、こんな感じになっています。
今回のJuno-106で制作するパッド音ですが、その基本波形に「ノコギリ波」を使う事にしました。Juno-106には基本波形として、「ノコギリ波」と「矩形(パルス)波」の2つが用意されています。両方同時に使用する事も可能ですが、ここはシンプルに豊かな倍音を含む「ノコギリ波」を選択。現在のシンセサイザーなんて、基本波形だけでも数百種類あるわけですから、そう考えるとJuno-106はシンプル過ぎますね(^^;;
では、まずJuno-106の生ノコギリ波を聴いてみて下さい。
Juno-106の生ノコギリ波
うーん。。。まぁ、素の音ですから、、、とてもパッドの音にはほど遠いですね。
では、早速、この音をスタートとしてパッドな音作りとまいりましょう。
Juno-106のパネルを左から順番に見て行きましょう。
・LFO&DCOセクション
まず「LFO」セクションです。ここで、音が鳴っている間全体の変化量を決めます。Juno-106では、ここで設定したLFOが音程と音色に効果が出ます。所謂、ビブラートやワウ、トレモロのような効果が作れるわけですね。RATEでLFO効果の量を決めます。ここでは大きめの値にセット。DELAY TIMEは鍵盤を押してから、どのくらいの時間でLFO効果を付けるかという値。ここは実際に演奏するフレーズを考えて、あれこれ設定してみましょう。私の場合は、かなり時間が経ってからLFO効果が出るようにしてみました。
次に「DCO」セクション、ここで基本波形を選択します。シンセサイザーでの音作りで、とても重要な部分ですね。先に説明した通り、Juno-106には「ノコギリ波」と「矩形(パルス)波」を選択できます。同時使用も可能ですし、右側にはSUBというサブ・オシレーターがあり、ここを上げると基本波形とは別に1オクターブ下の矩形波がミックスされる。低音を補強したり、音色に厚みを出したい時に便利です。その隣にはNOISEというものがあり、これはホワイト・ノイズを出してくれる。効果音やパーカッション系の音作りに有効です。
さて、まずRANGEは16フィートを選択、ここは演奏する音域を考慮しましょう。次のLFOで、先程のLFOセクションで設定した効果を、音程にどれだけ適用させるか設定します。あまり大きく設定すると音程がグニャグニャになってしまうので(それはそれで面白いですが)、ここではほんの少しだけスライダーを上げてます。PWMは「パルス・ウィズ・モジュレーション」という値なのですが、これは「矩形(パルス)波」に関係するものなので、今回は使用しません。
次ぎに白いボタンが2つありますが、左が基本波形「矩形(パルス)波」、右が基本波形「ノコギリ波」。ここは「ノコギリ波」ボタンを押しています。SUBとNOISEも今回は使用しません。
・VCF&VCAセクション
基本波形のセットが完成したら、次ぎはいよいよ“音色(ねいろ)”を作っていきましょう。まず最初のHPF、これはハイパス・フィルターというもので、低音部分をカットする働きがあります。今回は低音も欲しいので使用していません。
VCFセクション、所謂、フィルターです。ここが“音色(ねいろ)”のキモです。ローパス・フィルターという働きがあり、高音部分をカットする事が出来ます。カットするだけでなく、カットした部分を強調する事も可能でシンセサイザーならではという効果を作り出します。まずFREQで高音部分をカットする割合を決めます。そしてRES(レゾナンス)でカットした部分の強調度を決めます。FREQを一番上にすると何もカットされない素の音を出せます。ここは、少し落ち着いた音にしたいのでFREQを下げます。RESの設定はお好みですが、あまり強く掛けたくないので、とりあえず真ん中あたりで様子見です。
次にENVというスライダーとスイッチがあります。これは後で説明するEG(エンべローブ・ジェネレーター)というセクションで決定した値を、どれぐらいVCFに適用させるかというものです。鍵盤を押してから離す(離した後の余韻)までの間に、どのようにVCFをコントロールするかという項目になります。スイッチの絵柄を見ると、上下で正反対の絵柄になっていますよね。通常の音作りの場合、ほとんどは上向きの方に設定します。下向きは鍵盤を離してから急激な音色変化の効果を出したりという、ちょっとトリッキーな音作りに有効です。ここでは、VCFの変化を大きくしたくないのですが、ほんの少しだけ効果を付けて演出してみました。
LFOは、最初にセットしたLFOセクションの値をVCFにどれぐらい適用させるかという項目。DCOの時よりは大きめにセットしてみました。これで鍵盤を押していると、しばらく経ってから、ほーんの少しだけDCOで音程が揺らいで、同時にVCF側でもDCO以上に揺らぎが出るようにして、音色変化が生まれます。その隣のKYBDですが、これは音域によってVCFの効果を調整するものです。演奏するスケールにもよりますが、高音域での演奏の場合、少しKYBDを下げ目にしておいた方が良いでしょう。
(フィルターには、ハイパスとローパス以外にも、バンドパスやノッチという多数のフィルターがあります)
次にVCAですが、ここは所謂、アンプです。単純に音量のスライダーがあるだけですね。シンセサイザー本体のボリュームとは意味が違うので注意して下さい。シンセサイザー本体のボリュームは、上げ下げしても音色への影響がありませんが、ここのVCAでの音量の上げ下げは音色に影響が出ます。所謂、音色に“歪み”を持たせる効果があります。横にスイッチがありますが、通常はENVにセットしておきます。下のGATEにすると、次に説明するEG(エンべローブ・ジェネレーター)の効果が無視されてしまいます。もちろん、VCAにもEG効果を付けたいですからね。VCAにEG効果を付けると音量の変化を出せます。
・ENV&CHORUSセクション
さぁ、最後です。
まず、ENV。これはEG(エンべローブ・ジェネレーター)と呼ばれるもので、鍵盤を押してから離す(離した後の余韻)間の時間的変化の効果を作り出すセクションです。時間的変化という意味ではLFOとよく似ていますが、LFOが一定した効果を持続させるのに対して、EG(エンべローブ・ジェネレーター)は起承転結という感じで効果が一定にならない仕様になっています。
アタック・タイム、、、これは鍵盤を押した瞬間の効果を設定できます。例えば、鍵盤を押しても直ぐに音が鳴らないようにしたり、、、バイオリンやトランペットなど「ふぁぁぁ」という効果ですね。逆にパーカッションのように「パンッ」と鍵盤と同時に音が出たり。
ディケイ・タイム、、、次に説明するサスティン・タイムに移行するまでの時間を設定します。
サスティン・タイム、、、ここで設定したレベルで鍵盤を押している間は持続されます。
リリース・タイム、、、鍵盤を離してからの余韻を設定できます。
この4項目を略して、「ADSR」と呼んでいます。このEGを音程や音色、音量に適用させる事によって、音色の表情を作り出す事が出来ます。
残念ながらJuno-106は1つのEGで、「音色・音量」に適用させる必要があるので、VCFやVCAのEGの効果を受ける側で、そのEGの受ける量を決めてやる必要があります。最近のシンセサイザーでは少なくとも、独立した2つのEGを搭載しているのが普通なので、片方のEGをVCFに、もう片方のEGをVCAにという複雑な時間的変化を作る事が出来ます。
ここでは、アタックを少し遅め、ディケイとサスティンを最大にして、持続的な感じを維持してます。そしてリリースも遅めにして余韻を、たっぷり残す感じにセットしてみました。このセットが、これまでに説明したVCFセクションのENVに反映されるわけですね。
(Juno-106はEGをDCO/音程に適用させる事は出来ません)
最後にJuno-106内蔵のエフェクター、コーラスを掛けてみます。1と2がありますが、マニュアルによると1が浅く2が深いコーラスとのこと。ここでは1を選択。
さぁ、完成です。
Juno-106のパッド音
フレーズは最初の素のノコギリ波と同じです。どうです、見違えましたでしょう(^^;;
今回はJuno-106を使いましたが、他のシンセサイザーでも同じ方法論で音作りできます。基本となる波形選び、選んだ波形の音色(ねいろ)加工、LFOとEGを使った時間的変化。これらを順番にセットしていけばOKです。最近のシンセサイザーはパロメータが豊富ですが、必ず上記の項目に含まれる働きをしています。そこが理解できれば、シンセサイザーでの音作りも楽しくなってくると思います。
次回は、フリーで使えるVSTシンセサイザーを使って、何かやってみようかな。
コメント
Juno-106は、素敵な音色ですよね。