3月3日より新コンセプトでスタートした「nu things」。
オープン初日の3月3日から9日までの一週間は、「Acousmonium 03 -09 mar 2012 at nu things」と題して、オープニングイベントが催されます。
この一週間は、音響的にも面白い試みがなされます。
74年フランスの現代音楽家フランソワベルが考案した、異なる音圧、音色、大きさのスピーカーの集合体で構成された多次元立体音響、「アクースモニウム」というシステムが導入されます。
このオープニングイベント期間中は、大塚勇樹(Route09)氏が16個以上?のスピーカーを駆使した「アクースモニウム」システムをマニュピレートします。
ライブパフォーマンスをするアーティストが放つ「音」が、大塚さんの操作する「アクースモニウム」によって、どんな音の「空間」が出来上がるのか?
という面白い試みがなされている一週間になります。
そんな新しい空間の立ち上げに、今回は参加させて頂く事となりました。
そして、なんとオープン初日、それもフタを開けたら一番最後の演奏という、、、何時になく緊張したライブでした。
今回、リクエストでがあって、出来るだけ多くのモジュラーシステムでライブをして欲しい、という話だったんです。
うーん、となると、モジュラーラックx2セットになるかなぁ、と。
過去に何度かモジュラーラックx2セットでライブをした事がありますが、実はどれも良い結果が出てないんですよ。
色々と原因はあるのですけど、これだけ沢山のモジュールが揃うとパッチングも複雑になるわけで、いつも以上にパッチング作業に時間が掛かるのと、それに伴ってリスクも増える。今回も、機材を置いてから全ての作業が終了するまで1時間半ぐらい掛かってる(笑)、更にライブ中、途中で音が出なくなった部分があって、いったい、どのパッチケーブルの接触が問題なのか、怪しい箇所を特定するのに神経を使ったり。
あと、最大の問題は、限られたライブの時間内で、これだけ沢山のモジュール群を一人で使い切りないって事なんです。
大半のモジュールが、「放ったらかし」になってしまう。
そんな事で、今回はモジュラーラックx2セットではあるけれど、出来るだけ1セットに近いパッチングを心がけるようにして、もう初めから放置プレイなモジュールも決めておいて(笑)、逆に攻めていくモジュールを限定するようにしました。
まー、見た目は、やはり1セットより2セットの方が迫力はあるんですけどねー(爆)
そして、リハの雰囲気。
写真では分かりにくてですが、フロア全体にスピーカーが配置されていて、それもスピーカーのメーカーや機種もバラバラ。あえて違うタイプや品質のスピーカーを使っているそうで、これも独特の立体音響演出の一つのようでした。
そして、面白いのが演奏者は、あくまでも最終アウトがL/Rの2ミックスで出す、という事。特別、立体音響だから、、、という方法論を考える必要が無いのです。
2ミックスで受けた音を、大塚さんが操作するミキサーでリアルタイムに複数のスピーカーに音を割り振っていくんです。
ここは凄くアナログな作業で、観ていても面白かった。
デジタル全盛時代に、この音響システムの要が、両手で即興的にミキサーのフェーダーを操作する作業。凄くアナログな作業。
面白いなぁ、と。
演奏者が実際にフロアで、どんな音の「場」となって聴こえるかは、本番にならないとわからない。
ある意味で、音響も即興だし、演奏者と音響とのセッションともいえる。
そして、いよいよイベントのスタート。
トップバッターは、DEATH FLAMINGO into the memai。
ラップトップPC+シンセとピアノ、2組のユニット。
今回の新コンセプトに相応しいオープニングだったと思いました。
厳かに静かに始まった感じ。
ピアノが響き渡る空間で、シンセの音が立体的に動いてる。
この対比が面白かった。
フロアの中を色々と歩いて、色々な位置で音を聴いたりして楽しんでました。
そして、2番目が自作モジュラーシンセ+サーキッドベンディング的なエフェクター類による電子ノイズ、増田さんのライブ。
なんと増田さんは、自作シンセを普通に販売もしている。
今回、密かに楽しみにしてました。
増田さんと色々と話をしてて、私も「こんな装置があれば楽しい」って、似たようなイメージの仕様で製作が可能なのか、そんな談義で電圧話に花が咲きました(笑)
改めて、色々と相談させてもらいたいなと思ってます。
で、、、増田さんのライブ。
強烈なアナログ電圧が絡み合うノイズ。しかしながら、寸止めで耳に優しいノイズ。この感覚はアナログの電圧でしか出せない。
でーーーー、最初の雰囲気、、、実は自分のライブでも似たような音を出して始めようと思ってたんです。
でも、先に増田さんにやられてしまった(爆)
こ、、、こりゃ、いかん、と。
被ってる、と(笑)
急遽、作戦立て直しを迫られる。
終始、速めのテンポで回そうと思ってたんですけど、それを取りやめてLFOのクロックのスイッチを1段下げて、テンポ遅めの周期にして。
ノイズ音響的に入りじゃなくて、単音で響く感じで入る方向に切り替えた。
いや〜、ずーっと、出だしをどうしよう、どうしようって、直前まで考えてた(笑)
3番手は、junya tokudaさん。
徳田さんは、きっちり作り込まれた楽曲を小気味好く聴かせてくれました。
他の出演者の方々が、アンビエント系だったり音響系だったりしたので、ポップでダンサンブルな楽曲が立体音響の中で、どう聴こえるのかっていうのは、また面白い感じでした。
4番手は、西田彩さん。
今回、YAMAHAのTG77、それもAFM音源部分のみ、1曲で1音色のみ、そしてフィルターも通さずエディットするのはAFMのオペレーター&キャリア周囲(特にエンベローブ)のみという、かなり変則的なシステムでのライブ。
しかし、TG77のド変態ぶりのシンセサイズ機能は、もうそれだけで異空間を放ってました。
恐るべしFM音源。YAMAHA、この音源を出すのが15年は早かったと思う(笑)
そして、私。。。
んと、まぁ、
とりあえずイントロは変更して。
後は、いつもと同じように。
途中で、展開が作れなくなって、同じ事を繰り返す場面があって、そこが鬼門だったんですけど、なんとか最後まで持っていけた。
あ、あと、最後が引っ張り過ぎた感が、、、(笑)
終わるタイミングを考えていたら、どんどん絶好のタイミングを逃して行ってしまって(爆)
やってて、この立体音響、凄く面白かったです。
近くのスピーカーで鳴っていた音が、不意に消えて、違う遠いところで鳴ったり。
複数のスピーカーが同時多発的に鳴り響いてカオスになったり、
まあ、今までモジュラーx2セットのライブでは良い結果が出せて無かったのですけど、今回のライブは、だいぶいつもと同じ感覚で出来たので、それなりに結果は出せたかなぁ、と思ってます。
でも、ま、そうそう2セットを組んでやる事は無いと思いますけどね(笑)
そして、ライブ終了後には、普段の生活ではなかなか出会えるはずがないような方々と出会えたり、よい空間、素敵なイベントとなりました。
なかなか大阪では、音楽関連に限らず、コンセプトを全面に出したモノって売れないし、人が集まらない。
質よりも、量と安さが優先されちゃうのが大阪。
それって、面白くないって思ってるから、こういうnu thingsさんのような場所は貴重だと思う。
nu thingsさんのオープニングイベントは9日までやっているので、ぜひ遊びに行ってみて下さいませ。
立体音響システムを楽しめるのも、このオープニングイベントの期間だけですから。
nu thingsオーナーの阿木さん、そしてお誘い頂いた平野さん、お世話になりました。
音響の大塚さん、ありがとうございました。
そして、イベントに足を運んで頂いたみなさま、感謝!!
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