それでは少し話題を変えまして。。。ワタナベさんのスタジオにある機材、シンセ類やサンプラー、シーケンス・システムなどを簡単に教えて頂けないでしょうか。また、今一番気に入って使ってる機材などは、どんなものなのでしょう。 |
Quadra | 今はね、 Power Macintosh G3/333Mhz, Project II(audio card), 882 20bit I/O, STUDIO VISION, T-3,JV-2080(Vintage Synth,Hip hop,Classic, Session,Techno,World,SFX), S3000XL x 2, Midi Express, 02R, DEP-5, LXP-15, QuadraVerb pluse, SPH-323(phaser),SBF-325(flanger) (*1) 大体こんな感じ。かなり少なくしているよね! 一度持っていた機材を整理したくて 、良い機会だったのでNYから戻って来るときに大半の機材を処分して来ました。だから、向こうに居た時はもっと一杯機材あったけど今はこれくらいで十分作業は出来ます。 一時はやっぱアナログに凝った時があって色々持ってたよ!OdysseyやAxxeやSEMsとかOscarやKawaiのSX240っていうものすごく良い音するシンセや、もちろん303や909(*2)などもちゃんと持ってた。それこそ部屋中が鍵盤だらけになっちゃって楽しかったけど大変だったなぁ! アナログだと色々とメインテナンスとかも手間かかるし、、、帰ってくる直前まで 卓はMACKIEの32/8BUS(*3)を使ってた! あれは最高だったよ、音も良いしEQの感じも良かった。でもやっぱり同時に沢山のプロジェクトをしていく場合の事を考えて02Rにしたよ。02Rも今はすごく気に入ってる! ちゃんと使いこなせばアナログだろうとデジタルだろうと関係ないし。 結局、今僕がものすごく楽しんでやっている事ってミックスだと思う。シーケンスを組み、使う音を決めたらそれらをどううまくバランス良く卓でまとめていけるか? というところ。だから昔ほど今はどのシンセを使って何のエフェクターを通してとか全くこだわってない。それらはの大部分は卓上で結局どうにでもなってしまうからね。 もちろんあまりにも個性のある機材に関しては別だけど、、、これからも必要と思えば機材は当然増えていくし。 |
凄く意外でした、日本に帰国されてからは本当に絞り込んだ機材なんですね。STUDIO VISIONでは、HDRとしても使われているのでしょうか、882 20bit I/OなどはPro Tools(*1)のI/Oというイメージがあるのですが。。。N.Y.時代では、卓にMACKIEの32ch/8BUSを使用されていたという事ですが、ワタナベさんならではのグルーヴというか、音の太さっていうのは、MACKIE上でのミックスから生まれてくる部分もあるのかな、と思ってしまいます。そのリズム・トラックなど、やはりサンプラーがメインなんでしょうか? だいたい何チャンネルぐらい、リズム・トラックだけで使用されているのでしょうか。リズム・トラックのミックスって、本当に微妙で難しいところがあると思うのですが、とくにダンス・トラックなどでは。 |
Quadra | そうそう、882
I/OはSTUDIO VISIONでヴォーカルなど主にリミックスをする時に活用しています。だからDUBヴァージョンなどを作る時以外は結構VISION上でエディットを済ましてしまうことが多い。歌をループしてフィルターの開け閉めなんかの時は逆にサンプラーの方が早いよね! でも、最近は02Rになって色々な手法を取れるからフィルターの代わりにEQで似た効果をガンガンいじってシーケンス上にリアルタイムに入れていく。だからMACKIEでは決して出来なかった様なことを一瞬にして出来てしまうのはさすがデジタルならではと思う。使い始めの頃はちょっと音作りの時、MACKIEとの差に戸惑いがあったけど今は全くない。一度ちゃんと耳で感覚をつかめばどの卓を使ってもそれほど大差は無いと思う。もちろんそれぞれの卓に特徴というものはあるけどね! 僕の場合はとにかくEQ で音をどんどんいじっていくタイプなのでその点では02Rは本当に役立っているね。 でも本当に曲を作っていて思うのはミックスの大事さだね! それぞれの音のバランス、音数が多いときでも少ないときでも同じ、大事な事はトータルな全てのバランス。ミックスダウンって本当に面白いよ!(*2) ところで、リズムトラックはね、大体はやっぱりサンプラーだけど結構JVの音もパラアウトして使ったりしてる。前は909も使ってたからキック(*1)とかサンプルじゃ無かった時が多かったけど、売る前に音は全てサンプルしてるから全く同じ音を作れる。基本的には一つ909のキックの音があればいくらでも違ったキックのサウンドをEQとコンプで作る事が出来るでしょ! 毎回、曲ごとに違う音色のキックを作るのも一つの楽しみだしね。 チャンネル数は多い時は16トラック位かなぁ! 僕の曲ってわりかし音数が多い方だと思うから全体で32チャンネルフルで使う事もよくあるよ。でも本当にリズム系のミックスは微妙で難しいね! こればっかりは何度もやって行くうちにクラブで聴いてみてどうだったこうだったと試行錯誤してうまく行くようになるもんだからね。一度分かれば後は自由自在だよ! |
クアドラ節というか、ワタナベさんが作るリズム・トラック、とくにクラブ・トラックなどは音数が多いところに、さらにもう一つ、とい感じの音が入って来て、ぐんっと盛り上がるところなどは凄くミックスが丁重になされているんだなぁ、と解りました。ではもう少し具体的な製作のお話を伺いたいのですが、日本に帰国されてからは多くのリミックスをされていますが、なんといっても松田聖子の“瞳はダイヤモンド”を、HIROSHI.W 名義でシットリとしたR&Bナンバーにリミックスされていて、とてもビックリしたのてすが。。。これも、やはりSTUDIO VISION上でヴォーカルの編集をされているのでしょうか。ベース・ラインや間奏で入るシンセ・リードの音など、とても気持ちいいですよね。 |
Quadra | そう。STUDIO
VISION上で全てのヴォーカルを編集している! でも、あのハーモニーは全てHyperEngine の“Harmony”っていうソフトを使って作っています。もともともらったアカペラは単旋律だから、よりR&Bらしくするには当然ハーモニーって大事でしょ!
相当あれをやるのには時間がかかった。 でもおかげで聴いてくれたみんなは新しく取り直したヴォーカルなの? って聞いてくれるくらい良く出来たよ。VISIONのピッチシフトなんかより全然奇麗に出来るからそれも最大8声までも! だから最近僕がやっているリミックスではかなり“Harmony”を多様してる。 ベースやリードなんかはみんなJVから出てるんだよ! それぞれパラアウトで使ってるから02R上でコンプやEQなどでいじってね。JV2080は1080に比べると便利になっている分、マルチで使う時、音数やパート数がちょっとでもふえるとJV内のCPUがもたってすぐに発音するタイミングが遅れたりするんだよね、、、1080はまずそんなことは起きない。こんな時はJVのパートをマック上に取り込んだりもするよ。 話しをちょっと戻すけど、今回の“松田聖子”のリミックスは最近やったものの中では特に気合いを入れたやつだったね、R&Bにしたってこともあってやっぱり聴いてくれた人達が「何だよこれ〜、R&Bじゃないじゃん、、」みたいな事は思って欲しくなかったし、あえてミックス名にR&Bと入れたのもそこらへんかなり意識してる。こんなのも出来るぞ!!! ってね。 だからそういう意味で言えばかなりアピール色の強い意欲作品だったね! でもあれも松田聖子だから出来たんだと思うよ。やっぱり歌がうまい! あんなに昔の曲でも全くそう感じさせないし、アカペラで聴いていても飽きない感じだったなぁ! 歌がうまいとリミックスしていてもやりやすい。なんでかって言えば、ピッチを直したり、タイミングを直したりする手間も要らないからね! |
テクノやハウスなど、商業音楽の薄い所で育っていた部分って多いと思うのだけど、だからこそ音楽に対して作り手も聞き手も“純粋”になれていたところってあると思うのですね。そこから見ると、どうしても今の日本の商業音楽というかポップスって、疑問に思うところは多いですよね。前に石野卓球さんが、日本は情報量が多すぎて消化不良のまま、次の情報を詰め込もうとするからダメなんだって、音楽が好きなんじゃなくて、音楽の情報を追いかけるのが好きなんじゃないの?? って答えていて、凄く関心させられた事がありました。また、日本でミリオン・セラーになった曲が、それじゃあ、アメリカやヨーロッパでも売られるのかというと、そうじゃない現実があるのに対して、テクノなどは日本に住みながら、平気に海外のレコード会社と契約してるという。そして、それが輸入レコードという形で、日本に入ってくるわけで、この違いは疑問というか、いつも不思議に思う事でもあります。 |
Quadra |
そうだね! |