そうですよね。テクノやダンス・ミュージックなどは、音がダイレクトに伝わる要素が凄く多いと思いますから、いわゆるメガ・ヒットと呼ばれるようなジャンルにはならないだろうけど、これからも音楽の世界に変化をもたらしていくサウンドだと思っています。さて、本筋に話を戻します(^_^;; ワタナベさんの、ここ最近のリミックス・ワークスの中でも、即戦力のシンセとして活躍してるRoland JV-2080。沢山のエクスパンション・ボード(*1)を入れてられるようですが、とくにお気に入りのボードや音色ってありますか?? JV本体で音作りなどもされるのでしょうか。 |
Quadra | JVはね、ほんとに良く使ってるよ!
7枚ボードいれてるけどどれもかなり使い込んでるなぁ、VintageSynthはやっぱりローランドのもあってほんとに使える音が多いし、そのまま使う場合もあるけど基本的には何かしらはいじってるよ。フィルターだったりディケイだったり、基本音色を変えたり抜いたり。 それから、メインの2chアウト以外にステレオ2系統のダイレクトアウトがあるのでこれをモノで使って4chのパラアウトとして使い、後は卓の方で音を更に作り込んでいく感じかな。特にベースの音とかドラム系の音などは必ずパラで出すし、結局コンプやEQをかけたいものはそうなる。 あとちょっと問題なのはマルチモードでの発音のタイミングのズレ、これは結構困る、2080を使っている人は必ず感じると思うけど要は音数がちょっと増えて同時に出さなきゃならない時に発音がもたるんだよね、、、これも『えっ、これでもうだめなの???』って感じ、でもね1080だと絶対こんなこと起きないんだよね、だから本当は1080を2台使いたい、きっとそのうちそうすると思う。ローランドにこの事を問い合わせたところ、やっぱり2080は1080と同じ値段でやれる事を倍にしてる分処理速度が追いつけなくなる時がありうるという事でした。 どうしてもタイミングがどうにもならない時はそのパートをマックに取り込んで加工していきます。ボードについてはHIP HIPも良く使うし、SessionやSound FXもよく使う。でもそれぞれみんな良く使ってるよ!!!! |
どうしても、JVのようなデジタルでマルチ音源というのは、先入観でテクノやクラブ・トラックにはむかないと思ってしまうのですが、ワタナベさんの音を聴いていると「これ、本当にJVなの?」って思うぐらい、太くて厚い音ですね。ところで、去年末に出たパフィーのリミックス・アルバム(*1)。ワタナベさんもリミキサーとして参加してますが、これは久しぶりに聴く直球クアドラ節というか、めちゃくちゃカッコイイですよね。もう強制的に体が動かされてしまいそうな、ハード・トラック。あのキックとベースの一体感、かなり気持ちいいです、ベースとかはやはりJVなんですか? また、ヴォーカルに無線を通したようなエフェクトが、かかっていますが、あれはどうやってるんでしょうか? |
Quadra | そうだよ!ベースはもちろん、サンプルの音以外は全てJVで出してる。 前にも書いたけどベースや特色を持たしたい音は極力パラアウトして、それらを卓上でコンプやEQを使ってああいう音にしてるんだよね。もちろん、そのままでも十分という音もあるのでそういったものはステレオのメインアウトからまとめて出したりしてる。ほんとはもう一台欲しい。2台あれば何でも出来るんじゃないかなぁ? それから時々あるパートをそのままハードディスクに取り込んでマック上のプラグを通して加工する事もあるし、今は何でも利用の仕方次第でどんな事でも出来るじゃない?それでも僕の音作りなんてほんとにシンプルだと思うんだけどね。コンプやリミッターを使うか使わないかでほんとに音は変わるからね。更にEQは特に!!! だから言ってしまえば別にJVにこだわっているのではなく、なんの機材を使っても結果的には同じ事になるんだよね。こういう結果出来たものがほんとの意味でアーティストそれぞれの音の特色になる訳でしょ。僕も色々とアナログを使っていた時もあるからこの音はこれじゃなきゃ絶対出ない!ってものも当然あるんだけど、、、 今はあまりそういったところには感心がない。それよりはいかにトータルで聴いた時にバランスが良く、音楽の内容が豊かということの方がより感心を持てる。 そうそう、ベースもそうだけどキックだってサンプルだしもうあまりアナログとかデジタルとか考える必要もないんだよね。それから去年のリミックス(*1)については、パフィー以外のものは基本的にかなり今までの僕のものに比べるとシンプルにしてあるんだよね。パフィーの場合は歌の感じに合わせてああいうパワフルなものにしたんだよ! 歌に使ったエフェクトはVISIONのプラグで”AUTO TUNE”ってやつ。それからイントロの部分の歌には3Dの効果を加えてるのが”Ambisone”ってやつ。多分この効果が無線っぽい音に聞こえてるんだと思うよ。 |
少し前なら、固有のシンセの名前などがアーティストや曲と一緒に出て来る事が多かったですが、最近はワタナベさんの言われるように、固有のシンセ音っていうよりは、曲として完成した時の質感だったり、音質だったり。そういう部分の方に重点が移ってきたように思います。例えば、ワタナベさんはYAMAHAのデジタル・ミキサー02Rを使ってミックス・ダウンした後は、ダイレクトにDATなどにマスターをとってしまうのでしょうか? その後のマスタリング作業(*1)などにおいても、ワタナベさん自身はどのように関わっているのでしょか。 |
Quadra | 基本的にはそれぞれのレコード会社にマスタリングの事は任せる場合がほとんど、というのもいくら自分で一生懸命頑張ってDATに録音する段階で完成させたとしても結局商品になる前に必ずそれぞれのレーベルもしくはレコードのプレスされる場所で新たにマスタリングされてしまう、、、 そうなるとその場に立ち会える場合以外は当然自分が作った音を更に他の人によって変えられてしまう、こういう状態でプロモ盤とかを聴くと「うゎ〜、、自分が作った音と全然違う、、」とか、余計にコンプやリミッターをかぶされベトベトな最悪な音(*1)になる事もあった。(特にNYでレコードになっているもの) もちろんマスタリングする人がすごく良い耳を持っている人だったらこんな事を起きないし問題はない。日本の場合はあんまりいじらないからその辺結構安心かも?だから出来る限りマスタリングには立ち会えるようにする事が大事だね。それから作品が最終的にCDなのかレコードなのかでもちょっと音作りで差が出る。要は音をクラブ仕様にするかどうか?リスニング用ならある程度は低音を抑えたりするし、人にもよるけど僕はそのへん結構意識的にやってる。 でもまだまだ僕にしてもビックアーティストな訳でもないわけだからDATでマスターを渡してしまったらその後の事までなかなか管理出来ない、ましてやリミックスアルバムなんて言ったらコンピなわけだからみんなそれぞれ違う音のバランスのものが一緒に入ってるでしょ、、、 それだけマスタリングという仕事は難しく、また奥が深い。普段商品になった時、聞き手側にはなかなか意識されないし、評価されにくいところだけにこれがどれだけ重要な事かは当たり前だけど製作に携わっている人達にしか分からい事なんだよね。 |
マスタリング作業など、縁の下の力持ちというか裏方さん的な立場の仕事が、実際に“音”として僕らリスナーまで実感できる形で伝わるかと言えば、それは凄く難しいのでしょうね。ただ、ワタナベさんの言われるとおり、良い耳を持っている人なら、その曲の良い部分を広げてくれたり、アーティストが予想する以上の音を出して来るんですよね。しかし、それも凄く紙一重というか、マスタリング・エンジニアもアーティストだと考えると、そのエンジニアする人の個性というか、その人ならではの音作りというか。具体的に音を足すわけではないけど、アーティストの作った音に、何かしら+αしてくる人もいると思うんですね、それが良いか悪いかは別にして。海外はアーティスト的で、日本はエンジニア的という感じとか。本格的なマスタリングには固有の知識と、高価な機材が必要なんでしょうが、コンピューター・ベースの制作が当り前の今、やろうと思えばアーティスト自身がマスタリングできる環境もあると思うんですね。でも、それはある意味、予想どおりの音しか出てこないようで、少しつまらないようにも感じますよね。 |
Quadra |
確かにそうだね! |
そうですね、ハードとソフト・ウェアの進歩で個人で出来てしまう領域が、どんどん広がっていると思うのですが、音楽に関わらず“モノ作り”という意味では、必ずしも良い結果が出るとは限らないですよね。ワタナベさんは、日本に帰国されてから精力的にリミックスの仕事をされてますが、これは個人のオリジナル曲を作る時よりも、多くの人が間に関係してくるモノだと思うのですが、オリジナルとリミックスの作業上で、一番の違いや難しいところなど、どのように感じらてますか? |
Quadra |
一番の違いというのはやっぱり発想の出所だよね! |